前回のブログで令和4年度税制改正(法人税)のうち、経済活性化の観点からと考えられる改正について説明させて頂きますと申し上げました。具体的には1.賃上税制、2.オープンイノベーション促進税制、3.5G投資促進税制 4.地方拠点強化税制を挙げましたが、今回は1.賃上税制のうち⓵人材確保等促進税制について説明させて頂きたいと思います。
1.賃上税制
⓵人材確保等促進税制
■人材確保等促進税制とは?
新たな人材の確保及び人材育成の強化を促しつつ、就職氷河期の再来を回避する観点から、新規雇用者に対する給与を一定割合以上増加させた企業に対して、新規雇用者給与等支給額の一定割合を税額控除できる措置を講ずるとともに、事業変革に向けた人材投資(教育訓練費)を増加させた企業に対しては、税額控除率を上乗せする制度です。
■適用要件
青色申告書を提出する法人が、令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内新規雇用者に対して給与等を支給する場合において、新規雇用者給与等支給額の新規雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が2%以上であるときは、控除対象新規雇用者給与等支給額の15%の税額控除ができるという制度です。
この場合において、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が20%以上であるときは、控除対象新規雇用者給与等支給額の20%の税額控除ができることとします。
ただし、控除税額は、当期の法人税額の20%を上限とします(所得税についても同様とします)
(注1) 設立事業年度は対象外とします。
(注2) 上記の「新規雇用者給与等支給額」とは、国内の事業所において新たに雇用した雇用保険法の一般被保険者(支配関係がある法人から異動した者及び海外から異動した者を除く。)に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額をいい、上記の「新規雇用者比較給与等支給額」とは、前期の新規雇用者給与等支給額をいいます。
(注3) 上記の「控除対象新規雇用者給与等支給額」とは、国内の事業所において新たに雇用した者(支配関係がある法人から異動した者及び海外から異動した者を除く。)に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額をいいます。ただし、雇用者給与等支給額から比較雇用者給料等支給額を控除した金額を上限とするとともに、地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度の適用がある場合には、調整があります。
(注4) 比較教育訓練費の額は、前期の教育訓練費の額とします。
(注5) 給与等の支給額から控除する「給与等に充てるため他の者から支払いを受ける金額」について、その範囲を明確化するとともに、新規雇用者給与等支給額及び新規雇用者比較給与等支給額からは雇用調整助成金及びこれに類するものの額を控除しないこととします。
■適用に当たって
1.「新規雇用者給与等支給額」と「控除対象新規雇用者給与等支給額」で用いる給与等の範囲が異なります
人材確保等促進税制の適用要件等は、上記のとおり。「新規雇用者給与等支給額」(法人が1年以内に雇用した一般被保険者への給与等)の対前年比2%以上の増加が適用要件になっています。正社員、パート、アルバイトへの給与等も含めて、適用要件の判定を行うことになります。
この制度の税額控除限度額は、「控除対象新規雇用者給与等支給額」をベースに計算します。「控除対象新規雇用者給与等支給額」は、法人が1年以内に雇用した国内雇用者で、労働者名簿に記載された者への給与等であるため、一般被保険者への給与等に限定される「新規雇用者給与等支給額」よりも広い定義となっています。
例えば、新たに雇用した「高年齢被保険者(65歳以上の一定の雇用者)」等への給料等は、適用要件における「新規雇用者給与等支給額」には含めない一方で、税額控除限度額における「控除対象新規雇用者給与等支給額」には含めることになります。
2.適用要件の判定時には、給与等の支給額から雇用調整助成金等を控除しません
3.税額控除限度額の計算時には、給与等の支給額から雇用調整助成金等を控除します
4.所得拡大促進税制との併用はできません。
以上です。